会社法第330条に「株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。」との定めがあります。取締役は株式会社の役員にあたりますので取締役は会社に「何年間会社の運営を任せますから責任をもって運営してください。」と委任されるのです。
(役員とは、取締役、監査役、会計参与のことをいいますが、ここでは取締役にしぼって話をします。)
その時に会社は取締役にどれくらいの期間、会社を任せたらいいかを定めなければならないのです。
会社法には取締役の任期について原則2年とあります。ただし、株式の譲渡を制限することを定款に定めている会社(譲渡制限会社といいます)は、この任期を最大10年まで伸ばすことができます。多くの会社は譲渡制限会社にあたるので最大10年まで長く定めることができるのです。
取締役に任期があるということは、任期が満了したら会社との委任関係が終了してしまいます。従って同じ取締役との委任関係を続けたければ再任の手続きをしなければなりません。(この手続きとは再任の決議と登記のことをいいます。)
任期を2年と定めれば約2年ごとに登記しなければならないので、その都度費用が発生することになります。
任期を短く(例えば2年)した場合、現状の取締役の地位を継続させたければ前述したように約2年ごとに再任の決議とその登記が必要なので、その度に費用と時間が必要になります。
一方、任期を長く(例えば10年)した場合、短期間の任期を気にせずに継続して会社を運営できます。長い任期を設定すると約10年後に登記をするのを忘れてしまう恐れがあります。忘れてしまった場合には過料(罰金のようなもの)が発生する可能性がありますので注意が必要になります。
また、就任している取締役を会社経営に不満があるからといって辞めさせたい場合に問題がおきます。
辞めさせたい取締役が辞任届を提出してくれれば登記等の手続きをすればいいのですが辞めさせたい側から解任する場合には辞めさせられることに対して、その取締役から損害賠償を請求される恐れがあります。取締役を選ぶ場合には、このような将来のことを踏まえて任期を初めに設定する必要があります。
この場合は、その取締役がずっと経営を続けることになると思いますので定められる最大の10年にすることをお勧めします。
この場合は、短い任期(2年くらい)をお勧めします。前述したように経営上の問題等で、ある取締役を辞めさせたい場合には再任しなければよいので短い任期を設定すれば、その任期ごとに再任するしないの選択をする機会を持つことができるからです。
取締役の任期の設定は、このように安易に決めてしまうと後々のトラブルのもとになるので決定には十分な検討が必要になります。ご注意ください。